日本財団 図書館


 

ったり、大きな財政赤字を抱えたままの行政の改革においてこのスリム化は永遠の課題であろう。しかしながら、特に、1980年代から一貫して実施されてきた組織・定員の簡素化(組織の再編成、統廃合等や特定分野の定員削減)によって、各省庁の負荷はある意味では限界になりつつあることも否定できない。このため、一方において組織・定員の縮小を行い、それによる作業量の増加に対しては情報技術を活用して負荷軽減を図ろうとする方向へ行かざるを得ない状況にあるし、それに応えることが、まさに行政の情報化の基本方向でなければならないのである。

?A 地方分権

中央省庁の組織定員を縮小する一方で、その機能を縮小し、地方へ委譲して行くことも進められている。この場合の地方には、各省庁の地方支分部局という意味と地方公共団体という2つが想定される。前者については、上意下達と地方機関におけるデータ収集機能をベースとした従来の行政の組織論が根本から変革されることが可能になりつつあるのである。情報の集約、処理、伝達等のための中間的な機関の存在は必然ではないという状況になりつつあるのではないか。情報の集約、処理、伝達等の自動化は、小規模の支所の統廃合や中間段階の組織の存在を不要とするとともに、むしろ、情報を上部機関に伝達するだけではなく、地方組織における利用の拡大を可能にするという両面があるのである。いわゆる、情報利用の地方分権といえようか。

国・地方間の分権も一貫して、行政改革上の大きな課題とされてきたが、この地方分権を情報化の観点からみると、各省庁の個々の権限が地方公共団体の特定部局に縦に直接つながっているため、システムもそのような構成をとらざるを得ないという問題がある。地方公共団体において個々のアプリケーションごとに情報化が進められている限りにおいて特に、問題ではなかったが、県や市において庁舎内のネットワークが構築され、横の連携が円滑化されるようになると、各省庁のシステムに個々に接続されている端末機の存在は異質なものとして取り残されることとなりかねない。この場合、各省庁の個々の権限を地方公共団体へ限りなく委譲し、各省庁はその集約結果報告等だけを得ることで可とすれば、この縦系統のオンラインシステムと庁内LANの二重構造は解消されることになろう。この二重構造はシステムの標準化の面でまさに縦割り行政の弊害として現れることとなる。行政の情報化の観点でみれば、例えば、最近、県民や市民に対してICカードを配付し、行政サービス提供の際の認証に使っている地方がでてきているが、この身分証明、本人確認としてのICカードは、本来、

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION